COVERS
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ＲＣサクセションの作品コブラの悩み（Cobra In Trouble）
１９８８年１２月１６日／ＬＰ・ＣＤ／東芝ＥＭＩ
「COVERS」の発売中止騒動の後おこなわれた日比谷野音でのライブアルバム。
既存の曲の他に新曲も多く、童謡、金子マリの歌も入っているなど、このアルバムの位置づけを特殊なものにしている。
清志郎は「アルバムなんかいちいち作るのめんどくせぇ。新曲が聞きたけりゃ会場にテープ持ち込んで勝手に録音すりゃいいんだよ。」と言っていた。せっかく作ったアルバムが発売中止になったことへの怒りである。
発売中止にした東芝から新たに出すことに対する疑問の声もあったが、それには「移籍したってどうせどこもだいたい電器メーカーの子会社なんだし、RCが正義で東芝が悪者という単純な構図ができて事件が終っちまう。それよりも東芝に残った方が皮肉にもなるし、事実関係の調査もしやすい。だいいち移籍して新たなスタッフと始めるのはすごい体力がいる。そんなことに体力使うより歌を作る方に体力を使いたい。」というようなことを言っていた。
で、このアルバムは、もう曲名を見てのとおり事件への怨念がこもっている。
アルバムタイトルは「コブラみたいな悩みそうにないヤツでも悩んでしまう今の状況」ということ。
Ａ面
アイ・シャル・ビー・リリースト
作詞・作曲／Bob Dylan
日本語詞／忌野清志郎
頭の悪いやつらが 圧力をかけてくる
呆れてものも言えねえ またしてもものが言えない
権力を振り回すやつらが またわがままを言う
俺を黙らせようとしたが かえって宣伝になってしまったとさ
日はまた昇るだろう このさびれた国にも
いつの日にか いつの日にか 自由に歌えるさ
オリジナルはThe BAND。作詞・作曲はボブ・ディラン。カバーズ騒動のことをストレートに歌っている。
歌詞カードでは「日はまた昇るだろう東の島にも」となっている所を「東の芝にも」（＝東芝）と歌っている。
言論の自由
作詞／忌野清志郎
作曲／肝沢幅一
本当のことなんか言えない 言えば殺される
そんなもの嘘さ そんなものでたらめさ
それは不自由なもの それは不自由なもの
昔作った時は、まさかこんなにぴったりの状況が訪れるとは思わなかったろう。
「本当のことなんか言えない。言えばつぶされる！」
コール・ミー
作詞・作曲／忌野清志郎
もしもひとりで安全なときは ぼくにぼくにすぐにCALL ME
MARVYから。
「もしもひとりで退屈なときは」から「安全なときは〜」っていう歌詞に変更されてるけど、よくわかんない歌詞になっちゃったと思う。
ヘルプ！
作詞・作曲／Lennon-McCartney
日本語詞 ／忌野清志郎
HELP!
あ、兄さん婆さん、ありゃーゆうべの夜、夢が破れた
HELP!
あの子供の頃は心配なことも それほど恐ろしいことじゃなかった
でも大人になって気づいたことは 危ない世界に暮らしてることさ
もちろんビートルズ。
冒頭のダジャレはともかく、なかなかの名訳（替え歌）だと思う。
明日なき世界
作詞・作曲／P.F.Sloan
日本語詞／高石友也＆忌野清志郎
東の空が燃えてるぜ 大砲の弾が破裂してるぜ
おまえは殺しのできる年齢 でも選挙権もまだ持たされちゃいねえ
鉄砲かついで得意になって これじゃ世界中が死人の山さ
でもよォー 何度でも何度でもおいらに言ってくれよ
世界が破滅するなんて 嘘だろ 嘘だろ
COVERSから。
からすの赤ちゃん
作詞・作曲／海沼実
からすの赤ちゃん何故なくの
コケコッコのおばさんに
赤いお帽子欲しいよ 赤いお靴も欲しいよと
カァーカァー泣くのよ
童謡歌手でもあった清志郎の実母の吹き込んだレコードの同曲に触発されて収録。
原詞はうろ覚えだったため、多くの部分は清志郎が作詞。
「もうロックなんて呼ばれなくていいよ」。腐った日本のロックビジネスにうんざりしていた。
でも、突然童謡をアルバムに入れてしまうなんて、ファンはもちろん、他のメンバーはどう思っただろう。口には出さなくても当然反発はあったと思うよ。
Ｂ面
軽薄なジャーナリスト
作詞・作曲／忌野清志郎
軽薄なジャーナリストにはなりたくない
いくら落ちぶれてもなりたくない
軽薄なジャーナリズムにのるくらいなら
軽薄なヒロイズムに躍らされるくらいなら
そんな目にあうくらいなら
あの発電所の中で眠りたい
タイトルのとおり、カバーズ問題で見当違いの空騒ぎを演じたマスコミに対する刃。
「FEEL SO BAD」の頃にライブでやっていた「プロダクションの社長」という曲が原曲らしい。
心配させないで
作詞・作曲／忌野清志郎
どーしてそんなにメクジラを立てるの？
おいらはこんなに愛しているのに
心配なのさ BABY おまえのことが
たまには意見（はなし）を聞いておくれよ
BABY 今すぐやめて 無駄なことは
昔のように愛し合おうぜ
「COVERS」を発売中止にしたおエライさんに向けて歌っているんだと思われる。
パラダイス
作詞・作曲／石田長生
I get to get my Paradise.
You get to get your Paradise.
Bye-Bye Song 聞こえたら
Bye-Bye Song 不思議な夜に
Bye-Bye Song 酔ってもいいさ
石田長生（おさむ）詞・曲による金子マリVo.の歌。
正式メンバーではない人の曲を正式なアルバムに入れたことに関してはファンの間でも賛否両論あろう。
スタジオ録音せずにライブ録音でニューアルバムを出すなど、レコードに対しての失望感があったのだろうと思われる。
俺は電気
作詞・作曲／B.Nelson
補作／仲井戸麗市
ピカッと光ってスパッと消えよう
誰か触ればショートしちまう
Don't touch me 触らないで
俺は電気！
MARVYから。
あきれて物も言えない
作詞・作曲／忌野清志郎
どっかのヤマ師が 俺が死んでるって言ったってさ
よく言うぜ あの野郎 よく言うぜ
あきれて物も言えない
これまた入るべくして入ったナンバー。
君はLOVE ME TENDERを聴いたか？
（SPECIAL SHORT VERSION）
作詞・作曲／忌野清志郎
君はLove Me Tenderを聞いたかい
僕が日本語でうたってるやつさ
あのうたは反××××××××××××××××××………
本当は「あの歌は反原発の歌だって言うけど、違うよ、あれは反核の歌じゃないか…」という内容なのだが、イントロと冒頭のフレーズのみの収録となった。
清志郎曰く「東芝、マスコミ他全てに対しての嫌がらせです」
現場では「買った人が『最後の曲が途中で切れてるんですけど？』って言ってきたらどうしましょう」みたいな話もあったようだが、清志郎は「だったら全部収録させろよなー」とあきれていた。
完全版は海賊版として出回ったデモテープでのみ聞ける。清志郎のラジオ番組では一度オンエアされたが。
